あれから1年 Part4

前回の記事の続き

奇跡的に退院してきて父親

数ヶ月ぶりに自宅に戻ってきた父親

今まで子どもたちと遊びに行くと、

玄関まで出てきてくれた父親が、

退院後は奥の部屋のベットからなかなか起きることが出来ず、

それでもベットの上から子どもたちに「よくきたね」と

言っていた事を思い出す。

それでも主治医が言っていた余命宣告の時間まで、

段々と近づいていく現実。

とても複雑な心境だったけど、

誰もが、その現実を受け止め切れていなかった。

だから、父親が戻ってきたとき、

たとえベットの上にいる父親でも、

それが、また日常となり、

これからもずーっと家に

父親がいることが当たり前であるように

家族全員が思っていたと思う。

そして、父親との通院生活も始まった。

自宅から都内の病院までは首都高速を利用して最短で40分

病院は午前中までに入る必要があったが、

その時間帯の首都高速はだいたい渋滞をしているので、

渋滞に巻き込まれると60分以上はかかってしまう。

酸素ボンベと座ることも少し辛い父親にとっては、

20分の差は大きかったので、渋滞情報を見極め、

一番早いルートで病院まで連れて行った。

病院では、検査・検査・検査・検査・抗がん剤投与という

手順で半日かかる治療となり、自宅からの前後の移動時間を考えると、

父親の体力的にはかなりきつかったと思うけど、

それでも家にいたいという父親の思いもあり、

自宅から病院に通う日々が続いた。

そんな、病院に通う車の中で、

自分は何度も素直な気持ちで今までの事とから、

感謝しているという事を話しかけたかったけど、

でも、いま下手に感謝の言葉を言ってしまうと、

なんだか、もう終わりだと思われてしまうのではないか、

父親が生きることをあきらめてしまうのではないか、

そんな事を感じてしまい怖くて言えなかった。

だから、車の中は小さくかかるラジオの音、

父親のか弱く息をする音、

そして、その呼吸を補助するべく

作動する酸素吸入器の機械的な音。

この、酸素吸入器の音が

自分には父親の命の現実を

訴えかけるような感じがして、

とても切ない音に聞こえた。

そして、父親にとって、とても辛い通院だったけど、

その事をあきらめる事もなく、

5回目ぐらいの通院が終わり自宅に到着した時、

最初、母親が車から降りて、家の受け入れ準備をしていて、

車の中に父親と自分が2人きりになった時、

父親が急に力強くハッキリと自分にこう話しかけてきた。

 「お前が病気になり、

  いま仕事をしていないおかげで、

  俺はこうやって自宅に戻ってこれた。

  俺はその事に感謝しているよ。

  ありがとう。」

最初、自分は何を言われたのか理解できなかった。

だって、検査と抗がん剤の治療が終わり、

もう父親の体力も限界だろうと思っていたらか、

そんなに話す力があると思っていなかったから。。。

だから、自分は父親に返した言葉が

 「そんな事ないよ、こちらこそ今までありがとう。」

だったと思う。

そして、これが父親と最後に交わした会話だった。

また、話が長くなってしまったので、

続きはまた明日書きます。

今日も1日ありがとうございます。


コメント

  1. ジャスミン より:

    SECRET: 0
    PASS:
    日記を読んでいる中で、私も「お父さんと過ごす為の時間をもらったのでは?!」
    と思いました。

    お父さんの強い思いと希望をしっかりと受け止めて叶える役割があったんですよ!!

    病気は辛かったでしょうけど、悔いなく過ごせたのではないでしょうか?

    私の母方の祖母と父方の祖母は、自分が体調が悪かった時期に亡くなりました。
    弱って行く姿を見る勇気がなくてずっと会えないまま、お別れになりました。

    ずっと後悔してます。

  2. SECRET: 0
    PASS:
    >ジャスミンさん

    あたたかいコメントありがとうございます。

    とてもうれしく感じます。

    ほんと、この件で父から教わった事が、とても大きかったと思います。

    父の最後を見ていて感じたことなのだけど、
    人は死を迎えるとき、きっと、とてもやさしくなれるのだと思います。

    だから、ジャスミンさんのおばあちゃんは、
    最後に会えなかったかもしれないけど、
    ちゃんとジャスミンさんの事を受け入れてくれていると思います。

    そして、これが僕の今の思いだけれど、

    今の僕の人生が終わった時、
    また、どこかで父親と再会出来るような感じがしています。

    そして、そこで、色々あったけど、
    頂いた命の連鎖をちゃんと生き抜きました。って

    その時に父親に言えればいいのかな~
    と思っています。

    だから、ジャスミンさんにも、いつかまた、
    おばあちゃんに気持ちを伝えられるときが、
    来るのかな~と感じます。

    コメントありがとう。

タイトルとURLをコピーしました